とある2月のある日の出来事。
いつものようにみなとみらい周辺でお客様を待っていると、70代程のご夫婦から「タクシー乗れますか？」と声をかけられました。
私は「かしこまりました」と返事をし、お客様を車内へ。
「どちらまで？」とお聞きすると、「みなとみらいを観光したい」と予期せぬ返答が。ご予約ではないので、メーター料金になってしまうことをご了承いただき、ご夫婦との即席の観光ツアーが始まりました。
臨港パーク、よこはまコスモワールド、横浜ハンマーヘッド、赤レンガ倉庫と巡り、タクシーは大桟橋へ。
とても天気のいい日だったので、私はおすすめの大桟橋のビュースポットへ2人をご案内しました。
そこで私は、「観光なんて面倒くさいことをお願いしてごめんなさいね」と申し訳なさそうに話す奥様から、2人が横浜に来た理由を教えてもらうことに。
それは、ご主人の白内障の手術。手術を前に気持ちが落ち込んでいる夫を元気づけようと、奥様が提案したのがこの「みなとみらい観光」なのでした。
その後、中華街で食事をとり、観光ツアーも終わりが近づいてきました。
最後は「空から横浜を見たくなった」というご主人のリクエストにお応えしてロープウェイへ。
「今日は本当にありがとう。元気になったよ」そんな別れ際のご主人の言葉と笑顔を胸に、私はご夫婦を温かい気持ちで見送りました。
ひと仕事終え、缶コーヒーでひと休み。この日の缶コーヒーは、心に温かくしみわたり、忘れられない味となりました。
