時間を越えて、また同じ席に
タクシーがつないだ二度目の出会い
T.I

ゴルフ場から、二人組のお客様をお乗せした日のことでした。
まずはお一人目をご自宅へお送りし、続いてもう一人のお客様の行き先を伺いました。
その住所を聞いた瞬間、私はすぐに気づきました。
「あ、一年前にお乗せしたお客様だ」と。
あの日も土曜日で、道が混んでいました。
「少し距離は遠くなりますが」とお伝えしたうえで抜け道をご提案し、
大きな街道を外れて、とある県立団地を通ったのです。
するとお客様から、「もしかして○○団地ですか?」と声をかけられました。
「そうです」と答えると、その方は懐かしそうに、
「40年くらい前、小学生のころによく遊びに来た親戚の家がこの辺にあったんです」と
話してくださいました。
その時の表情が、とても印象に残っていました。

その記憶を思い出し、私は声をかけました。
「道が混んでいるので、今回も○○団地を抜けてお送りしましょうか?
去年、懐かしがられていましたよね」と。
するとお客様が少し驚いたように、
「もしかして、去年送ってくれた運転手さんですか?
一年前に一度しか乗っていないのに、よく覚えていますね」と、
感心したように笑ってくださいました。
その言葉が、とても嬉しく心に残りました。
お話を伺うと、この4月から1年半ほど、岩手へ単身赴任されるとのこと。
「戻ってきたら、またぜひ乗せてください」
そう言っていただけたことが、何よりの励みになりました。
タクシーの仕事は、一期一会の連続です。
それでも時々、こうして時間を越えて、同じ人と再び出会うことがあります。
人の記憶と想いを運ぶこの仕事を続けていて、本当に良かった。
そう感じた出来事でした。